【中編】ビットコインETFへの期待と課題

第2回目となる今回は、③ビットコインETFの申請状況について解説します。第1回目(①ETFの基礎知識、②ビットコインETFの基礎知識)については、「【前編】ビットコインETFへの期待と課題」ご覧ください。

③ビットコインETF(米国)の申請状況

米国初のビットコインETF

米国で最初に証券取引委員会(SEC)へ申請されたビットコインETFは、2013年7月1日のことで、アメリカの著名な双子兄弟キャメロンとテイラー・ウィンクルボスによる取り組みでした。2013年当時の仮想通貨を取り巻く環境と言えば、ビットコイン価格は約85ドルと現在の100分の1程度しかなく、仮想通貨取引所もMt.GoX(マウントゴックス)が全取引の70%を独占している状況にありました。

仮想通貨ビットコインの草創期に申請されたウィンクルボス兄弟のビットコインETFは、上場先の追加・変更など、計6度の変更を経て、2016年6月にBats BZX Exchange(現CBOE BZX Exchange)への上場申請に切り替えられました。

最終的な上場申請(変更含む)によると、ウィンクルボスのETF商品(Ticker:「COIN」)は、ウィンクルボス兄弟が経営し2014年に創設された仮想通貨交換所Gemini(ジェミニ)の取引価格に連動するようになっています。また、カストディー(保管・管理)も、Geminiが行うとされています。取引価格への連動は、先物取引ではなく「現物拠出型」(【前編】参照)で、裏付けとなる現物(この場合、ビットコイン)のスポット価格に連動する商品設計となっています。現物拠出型は、まず運用会社が証券会社や機関投資家(銀行、保険会社、年金基金)といった「指定参加者」と呼ばれる機関から資金を集めた上で、ETFを流通市場で取引するのが特徴ですが、同ETFも、10万株のバスケット(1株0.01BTCで1バスケットあたり1000BTC)で構成されたETFを適格な参加者(「指定参加者」)向けに発行市場で販売する設定です。1株0.01BTCから取引可能であることから、個人投資家をターゲット層としたETF商品と見受けられます。

当該「COIN」の上場申請は2017年3月付けでSECに否認されました(詳細後述)。ところが、間髪を入れず翌4月にはBats BZX Exchangeから請願書が提出され、SECは「否認」判断の再考を受諾しました。もっとも、結果的に当該請願書に対してもSECの判断は覆らず、2018年7月26日付けで「COIN」の上場申請は改めて否認されました。

ビットコインETFを取り巻く環境の変化

米国で初めて申請がなされた2013年以降、ビットコインETFを取り巻く環境にも大きな転機が訪れています。まず、2015年9月に米商品先物取引委員会(CFTC)がビットコインを含む仮想通貨を「コモディティ」と定義したことにより、既存の金融商品と同様に取引できる可能性を検討する動きが加速し、2017年12月にはビットコイン先物の上場が承認され、シカゴ・オプション取引所(CBOE)及びシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で同先物が上場されるに至りました。

先物取引の開始時機から見て、「COIN」の上場が一度否認され、その僅か1か月後に、Bats BZX Exchangeの請願書を受けて、「否認」判断の再考を受諾したのは、この時既に仮想通貨の先物市場を検討する動きが水面下で進行しており、SECとCFTCが連携して、ETFに対してより慎重且つ適切な精査が必要との判断があったからではないかと推察されます。

そして、2017年12月に先物市場が開設されたことで、ウィンクルボス兄弟のETFとは異なる、「株価指数先物型」(【前編】参照)のビットコインETFの上場申請が米国で活発化しました。もっとも、その殆どは、直ぐに申請が取り下げられています。

申請中のビットコインETF

現在SECに申請中のETFは、

⑴Direxion Asset Management(ディレクション・アセット・マネージメント)
⑵GraniteShares(グラニット・シェアーズ)
⑶VanEck(ヴァンエック)とSolidX(ソリッドX)

上記によって提供される3件となっています。

この中で最も実現性が高いと有力視されているのが、⑶の2018年6月にCBOE BZX Exchangeへの上場申請がなされたVanEck とSolidX社のETFとなっています。

本稿では、最も有力視されている⑶のETFについて解説していきます。

VanEckとSolidXのビットコインETF
(VanEck SolidX Bitcoin ETF)

このビットコインETFの上場を有力視する理由に、VanEck(販売会社とインデックス提供)及びCBOE(上場先)の信用力と、商品設計(機関投資家向け、保険制度など)が挙げられます。そのため、このビットコインETFを関係者と商品設計という要素に分けて解説していきます。

  • 関係者(VanEck・SolidX・CBOE)
  • 商品設計

関係者(VanEck・SolidX・CBOE)

まず、ETFの販売及びOTCベースのインデックス提供を担うVanEckは、1955年に設立された米国の運用会社であり、主にETFとミューチュアルファンド(※)の組成を行っています。国際分散投資のパイオニアとして、天然資源や金などのコモディティから新興国市場の株式や債券まで、多種多様な資産に投資しています。同社は1968年に米国で最初となる金鉱株ETFを組成し、現在では50を超えるETF商品を取り扱っています。世界各国の機関投資家400社以上から運用委託を受けており、2016年の運用資産残高ランキングでは米国内で9位につけた実績があります。

VanEckと提携する同ETFのスポンサーとなるSolidX(※)に関しては、企業に関する情報開示はほとんどありませんが、機関投資家向けにビットコインのトータルリターンスワップを含む金融商品を提供する「金融サービス会社」として2014年に設立されています。

※厳密にはSolidX Management LLCで、SolidXの完全子会社

そして、同ETFで最も注目されているのが、「CBOE」の存在で、⑶のETFを「CBOEのETF」と表現する記事も散見されます。CBOEは世界有数の取引量を誇る信用力の高いデリバティブ取引所ですが、CBOEによるビットコインETFの上場申請は今回が初めてではありません。

ウィンクルボス兄弟の「COIN」もその1つに当たるため、CBOEは既にSECから「否認」を受けているのです。つまり、信用力の高い「CBOE」による上場申請という点だけで「SECから承認を得られる公算が大きい」と解釈するのは若干誤解を招く恐れがあります。本質的には、2018年1月に公表されたDalia Blass氏の懸念表明の書簡により一旦閉ざされた上場申請の門戸が、CBOEのChris Concannon社長兼COOの2018年3月23日付で出された返信(詳細後述)によっていくつかの懸念を軽減したことで再び開かれ、その後初となる上場申請をCBOEが提出したため、客観的に「CBOEが後押ししている」と捉えられることにあると考えられます。その上、VanEck及びSolidXという、ビットコインETFの上場申請を過去に行っていてこれを取り下げた経緯のある両社が、戦略を新たに提携をして再び上場申請に挑んでいることから、CBOEの後押しを得た、SECの懸念点への対策が講じられたETFとして、市場の期待が高まったものと見られます。

※アメリカにおける一般的な投資信託の通称を指します。これは、米国で複数の投資家が資金提供、共同運用を行うオープンエンド型投資信託(随時解約可なファンド)を言います。

商品設計

上場申請によると、VanEckとSolidXのETF商品(Ticker:「XBTC」)は、「現物拠出型」ETFで、OTCプラットフォームの取引価格から形成されるMVIS Bitcoin OTC Index(MVBTCO)に連動するビットコイン価格から信託費用等を差し引いた価格への連動を目指して運用を行うとされています。そのため、ETFファンドは運用資産の大部分をSEC及びFINRA(米国の金融業規制機構)の規制下に置かれた米国のOTC市場でのビットコイン取引に向けるとしています。「COIN」が1仮想通貨取引所である「Gemini」の価格指数に連動したのに対し、「XBTC」は米国の規制下に置かれる複数のOTCプラットフォームにおける取引価格を参照することで、1取引所に発生し得る価格の高騰や価格操作リスクを軽減する公算です(※)。さらに、同ETFは、ETF1株25BTC(※)で予定されていることから、機関投資家や大口の富裕層をターゲットとした商品となっており、OTC市場で大口取引を行う方が効率的であるとも示されています。

ETFファンドが保有するビットコインは全て、マルチシグネチャのコールド・ストレージ・ウォレットを使用して保管され、バックアップ措置および災害復旧時の安全対策として、米国各所で分散した場所にコールド・ストレージ・ウォレット・バックアップを物理的に設置するともしています。そして、同ETFの特徴である保険制度について、ETFファンドが保有するビットコインの価額次第では、支払限度額を引き上げる準備もあるが、複数のA格の保険会社により、当初の想定支払限度額はPrimary coverageとして最大25百万米ドル、Excess coverageとして最大100百万ドルまで保証する枠組みを維持する見込みとなっています。さらに、ETFファンドの総保有ビットコイン価額が支払限度額となる125百万ドルを超過する場合、スポンサーは追加保険も用意しており、ETFファンドの総保有ビットコイン価額(米ドルベース)と完全に一致する保険の付帯を目指すと説明されています。

※OTCでの取引価格も取引所価格に引きずられる可能性はあるため、あくまでリスクの軽減に止まります。

※1株25BTCで、1バスケットあたり5株(125BTC)の予定で、1BTC=70万円換算で、1,750万円相当となります。

「XBTC」の承認時期の目途

SECの承認日程は、当初の申請公開日を基準に45日の検討期間が設けられており、45日以内に判断できない場合は延長が最大3回認められています。

1回目+45日、2回目+90日、3回目+60日となっています。最有力候補の③に当てはめると、7/2付で申請書が公開されているため、延期した場合の対応する期日(米国営業日を加味)はそれぞれ2018/8/16(8/7付で延期確定)、2018/10/1、2019/1/2、2019/3/4となっています。金融活動作業部会(FATF)が投資家保護やマネーロンダリングに関する何らかの方針を示すのが10月の見込みであることに鑑みると、年内の承認は見送り、最終期限である3月まで検討が続けられる公算が大きいと見られます。

ビットコイン相場を巡っては、足元約3週間ぶり安値圏まで反落している。8/7付でSECが(VanEckが手掛ける)ビットコインETFの承認可否判断を9/30まで先送りしたことが背景にあります。市場の関心はまさにETF一色といえます。

次回「後編」では、④ETF承認への課題(ウィンクルボス兄弟のETFが否認された理由と、これを踏まえた「XBTC」の承認可能性)を整理の上、ビットコイン価格の先行きについて考察していきます。

 

参考レポート(アルトデザイン株式会社)

ビットコインETFへの期待と課題(中編)

 

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