【前編】ビットコインETFへの期待と課題

ビットコインの対ドル相場は、米証券取引委員会(SEC)によるビットコインETF(上場投資信託)上場可否を巡る思惑に先週来大きく揺れました。

きっかけは、ETF運用会社最大手の米BlackRock(ブラックロック)社がビットコイン版ETFの可能性を探るためにワーキンググループを立ち上げた可能性があるとの7/16付けの報道でした。これを受けて、ビットコインETF承認への期待がにわかに高まり、ビットコインは他通貨を大きくアウトパフォームしながら、約2カ月ぶりに8000ドルの大台を回復しましたところが、7/27に入ると相場は急変しました。それは、昨年3月にSECに否認され、請願書が改めて提出されていたBats BZX Exchange(現CBOE BZX Exchange)が上場申請をしていたウィンクルボス兄弟のビットコインETFがSECによって再び承認を退けられたからです。ビットコインETFを巡る悲観的な見方が広がる中で、ビットコイン価格は一時8000ドルを割り込みました。

もっとも、7/28未明にかけてビットコイン価格は再び反発しました。本稿執筆時点では8000ドルを回復するなど、SECによる否認判断がさほどネガティブ視されなかった様子も伺えます。こうした動きの背景としては、①SECから92ページにも及ぶ公開意見書が発表されたことでSECの真剣度合が垣間見えたこと、②SEC委員メンバーの5人中、1人(Hester M Peirce/ヘスター・ピアース氏)が「承認」票を投じたことで否認一辺倒の状況に風穴を開けたことなどが考えられます。事実、ピアース氏は7/30付で、SECの判断に異議を唱える声明文を正式に公開しました。このように、ETFを巡る様々な報道が足元のビットコイン価格に大きな影響を及ぼしています。

本稿では、①ETFの基礎知識、②ビットコインETFの基礎知識、③ビットコインETFの申請状況、④ETF承認への課題を整理の上、ビットコイン価格の先行きについて計2回に分けて考察します。第1回目では、①ETFの基礎知識、②ビットコインETFの基礎知識について解説します。

①ETFの基礎知識

ETFとは

ETFとは、Exchange-Traded Fundの略語で「上場投資信託」と呼ばれています。その名の通り、投資家から集めた資金を元手に、特定のファンド会社等のプロ投資家が株式や債券などに投資し、その運用の成果を投資家に還元する「投資信託」(投信)を上場させた商品となっています。投信が1日1回算出される基準価格でしか投資家が売買できないのに対し、ETFは株式と同様、取引所の立会時間中において「リアルタイム」に変動する取引価格で売買することができ、信託報酬(投資家が支払う手数料)も通常の投信より低水準であることなどがメリットとなっています。

ETFの信託報酬が投信より低水準であるのは、(a)調査費用 ― 指数より高いリターンを目指すアクティブファンドのようにプロの運用会社が間に入り、「分析」し、組み入れる銘柄の「入れ替え」を頻繁に行わなくて良い(指数連動型投資信託も同様の利点を持つ)こと、(b)販売手数料 ― 販売会社を通じて投資家から資金を集める必要がないため、販売手数料が抑えられること、(c)株式の売買コストと現金の留保コスト - 現物拠出型ETFの場合、株式などの売買を行うコストやETF解約時に備えた現金の留保コストが不要であることなどが理由として挙げられます。

ETF市場の現況

2018年7月時点で東京証券取引所(東証)に上場されているETFは222銘柄にも上り、2017年のETF売買代金は81,455,195百万円を記録しました(※1)。日本銀行(日銀)も現行の金融政策においてETFの買い入れ目途を年間6兆円のペースとしており、2018年3月末時点では累計19.3兆円もの買い入れを行っている状況です(※2)。国内でこれだけの取引額を生み出していても、東証のETF売買代金は世界全体の2%に止まります。シェアの過半は米国取引所が占めて(※3)おり、取引所別のシェアでは、1位ナスダック(44%)、2位ニューヨーク証券取引所(NYSE、23%)、3位シカゴ・オプション取引所(CBOE)傘下のBATS(BZX、21%)が占めます(※3)。そして、今回ビットコインETFで注目されているのが、3位につけている「CBOE」による上場申請であったため、取引実績と信用力の高さから、市場の関心を一気に集めることとなりました。

(※3)出典:2018年7月6付日本経済新聞

ETFの成長

ETFが存在感を増したのは、2008年時のリーマンショック以降と言われています。ETFは指数との連動を目指す商品であり、指数を上回るアクティブ運用ができないのが特徴ですが、リーマンショック以降、アクティブ運用を行う投信が手数料の割にリターンが振るわなかったことで、手数料のより低いETF投資により注目が集まりました。また、ETFを構成する銘柄が一般公開されていることも、透明性の観点から人気を博し、2017年(単年)の世界のETF売買代金は18兆ドル(約2,000兆円)にまで成長しています。同年の株式の売買代金が82兆ドルであるため、ETF市場の規模は株式の4分の1弱であるが、対するビットコインの取引高(2018年の日中出来高の平均を年換算)が2.6兆ドル程度であることを考慮すると、ETF市場への参入がビットコイン市場の流動性向上に寄与する可能性は高いでしょう。

この前提には、「指定参加者」と呼ばれるETFの設定・解約ができる証券会社のうち、取引所にETFを上場させる際に、円滑な売買の成立を確約する2社以上の証券会社と、ETFの取引価格とETFが投資する資産(ビットコイン)価格・先物価格との間で裁定取引(アービトラージ取引)を積極的に行う「マーケットメーカー」による仮想通貨市場への参入があります。

②ビットコインETFの基礎知識

ビットコインETFとは

ETFを含む指数連動型投資信託(インデックスファンド)と言えば、複数銘柄で構成されているイメージが強いものの、現在SECに申請されている仮想通貨ETFは、ビットコインのみ(1銘柄)に連動する商品が中心で、TOPIXなどの指数と連動するものより、金や原油といったコモディティ連動型のETF商品に類似しています。(実際、米国では連邦地方裁判所によって、仮想通貨商品は、コモディティや先物商品等を監督する米商品先物取引委員会(CFTC)によって規制され得る判決も出ています。)

また、指数に連動する ETF の仕組みには、構成銘柄を直接購入して保管する方法(本稿では「現物拠出型」と定義)や、先物やデリバティブなどを活用して、合成的に指数に連動させるように組み合わせる方法(本稿では「株価指数先物型」と定義)などがあります。現在市場の関心を集めているCBOEによるETF(申請中)はこの内現物拠出型ETFに該当します。

上記2点から、申請中のビットコインETFは、金の地金価格への連動を目指し、信託銀行が金の現物を管理・保管しているような商品(例:「SPDR ゴールド・シェア受益証券」)との類似性が高いと言えます。故に、ビットコインETFはしばし金ETFと比較されており、足許のビットコイン相場も、2003年に金ETFが上場して以降、株式市場に滞留していた資金が金市場に流入したことで金相場が「高騰」したことになぞらえて、ビットコイン価格「高騰」を期待する投機的な見方が下支えしているように見受けられます。

現物取引 vs ビットコインETF取引

金を含むコモディティ投資には、(a)現物投資、(b)先物市場を活用した投資、(c)関連企業の株式投資、(d)投資信託の保有という選択肢があります。対するビットコインは(a)~(c)は現時点でも取引可能ですが、(d)の市場がなく、ETFの上場申請はこの市場を開拓する動きと言えます。また、非上場の「投資信託」ではなく、「ETF」が推進されているのは、前述の通り、手数料が低く、リアルタイム取引が可能である観点から、仮想通貨取引所で現物をスポット取引で購入する場合と大差ない「投資環境」を創出できるためと考えられます(CBOEの取引時間に限定される分ETF仕立ての方が取引自由度が低いとも言えます)。

ビットコインETF選択のメリット

それではなぜ、投資家は現物取引ではなくあえて1銘柄で構成されるビットコインETFを選択するのでしょうか。

金ETFの場合は、(ETF全般に言える株式からの資金流入等を除いては)小口投資ができ、物理的に「金塊」を保管しておく必要がなく、現物で保有するより場合よりも売買が容易で流動性が高いこと等が挙げられますが、ビットコインは、それ自体がデジタルな資産であるため、これら金ETFの利点は全てビットコインの現物取引にも当てはまります。

そこで、ビットコインETF特有のメリットとして考えられることは、まず、ETFが参照すべき統一の「指数」が生まれることで、現在取引所毎に異なっている「一物多価」の問題が解消され、価格の透明性が高まること、そして現物取引でないことにより、仮想通貨を保管する「ウォレット」の管理や、ハッキングリスクを投資家が個々に負担する必要がなくなることでしょう。さらに新たな金融商品が創出されるという観点から言えば、出来高の増加と機関投資家の参入を見据えた、セキュリティー面の強化や投資家保護の整備を加速化させる後押しにもなり、仮想通貨市場発展の起爆剤になることが期待されます。但し、ビットコインETFが複数銘柄に裏付けられた場合や、既存の金融商品との組み合わせにより複雑化した場合などには別の論点も考慮する必要があるかもしれません。さらに、ビットコインの決済手段としての実用性や利便性の向上も同時に必要になってくることが考えられます。

【中編】ビットコインETFへの期待と課題

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