仮想通貨と社会−第3回:ベネズエラ国産トークン「ペトロ」についての考察

 

2018年2月20日は仮想通貨の歴史上重要な日になるかもしれないです:世界で初めて南米のベネズエラが自国の豊富な原油に基づくトークン「Petro(ペトロ)」のICOのプレセールを開始しました。

一見「国がするICO」ということで革新的に見えるこのICOですが、背後には政治経済的要因と仮想通貨コミュニティの反発があるようです。

 

ベネズエラの政治経済 

ベネズエラの法定通貨ボリバルは長い間不安定な状況にあり、過去数ヶ月間でその価値は57%も暴落しています。海外の仮想通貨情報サイトBitcoinExchangeGuideはそんなボリバルをワールド・オブ・ウォークラフト(コンピュータ・ゲーム)内で用いられるゴールドより価値が低いと報じているほど危機的な状況下にあります。言うまでもなく経済的にも先行きは危うく、今年で12%の経済規模縮小と2,300%以上のインフレ率をIMFは予測しています。

ベネズエラがこのような経済的窮地に立たされているのは、その独裁政権に対する国際社会からの制裁、特にアメリカからの金融制裁が理由として挙げられます。

ニコラス・マドゥロ大統領はこの経済危機を脱する術としてペトロの導入を決断。「でかい問題にはでかいソリューションだ」とプレセール開始日の式典で発言し、ペトロ導入に大きな期待感を示しています。

ベネズエラ政府は独裁政権ではありますが、選挙が行われます。今年の4月には次の選挙があり、マドゥロ氏が再選に向けてペトロを導入し経済政策アピールをしているとの見方もできます。

金融制裁を強く行ってきたアメリカ政府関係者のペトロへのリアクションはやはり悪く、前回大統領選挙で共和党候補者レースに立候補したマーク・ルビオ上院議員と、民主党ロバート・メネンデス上院議員は財務省に向け書面で今後ベネズエラ政府への動向監視強化を要請しました。アメリカのペトロに対するコンサーンとしては、やはりペトロが金融制裁の逃げ道になりアメリカの影響力が低下することだと考察できます。

確かにペトロがベネズエラ政府の思惑通りになると現在の国際経済のパワーバランスに与える影響は前代未聞になると思われます。ですが、専門家や投資家の間でペトロを支持しない動きがあるようです。

 

信用問題と仮想通貨コミュニティの反発

ペトロはベネズエラの原油の値段と結び付いたトークンとなっていますが、そのリンクについて十分な説明が政府からなされていないとして、不信感を抱く投資家が多いようです。つまりその原油とトークンのリンクについてはベネズエラ政府を信用しなければならなく、ペトロへの信用=ベネズエラ政府への信用というリスキーな構図ができてしまっています(ICO以外まともな経済政策を取れない、しかも独裁政権を信用できるかという問題になります)。

さらに、20年以上ベネズエラ経済を研究してきた社会学者のデビッド・スミルド氏も、ペトロもベネズエラの負債と同様のシナリオを辿るだろうと悲観的なスタンスを示しているそうです。

上記のようにペトロだけでなくベネズエラ政府への信用を考慮すると、今回のICOは若干ハード・セルなのではないかという印象を受けます。

さらに今回のICOで注目なのは一部の仮想通貨コミュニティの反応です。今週ペトロのICOプレセールが開始するタイミングで、市場全体が下降傾向になりました。Bloombergは、ペトロが引金となり仮想通貨が中央集権的に管理される通貨になってしまうのではという不信感が市場に影響を与えたのではないかと考察しています。

仮想通貨はそもそも分散管理され、非政治的で透明性と公平性が魅力とされているので、それが政治利用されてしまっていることに反発を示す投資家がいるのも理解できます。

参考:仮想通貨と社会−第2回:オープンソースであることの意義

 

一夜開けて

以上のようなコンサーンがあるにも関わらず、マドゥロ大統領自身のツイッターによるとペトロは24時間で7.35億ドルを調達したと報じられています。そしてその勢いでマドゥロ大統領は、今度は金のリザーブに基づいたペトロ・ゴールドの導入も発表しました。ただ、ペトロのホームページで調達金額の進捗状態を確認することはできず、情報の信憑性に疑問が残ります。というのも、24時間でこの調達額は前代未聞で、2017年ICO最高調達額でもFilecoinの2.57億ドルと今回ペトロの調達額は桁外れなのです。

税理士法人のアーンスト・アンド・ヤング(E&Y)が1月に公開したICOレポートでは、ICOが「hype(誇大広告)」と「過剰リスク」と同義語になってしまっていると主張しています。また、「Fear Of Missing Out(チャンスを逃すことへの不安)(FOMO)」が投資家を動かしていると警告しています。英金融コンサルのアルバイン・キャピタル・マネジメント投資委員会長スティーブン・アイザック氏も類似の見解を出していて、現在の市場を特徴づけるのは単なるスペキュレーションの超過であるとBloombergとのインタビューで言い捨てています。

マドゥロ大統領が報じる調達量が真実だとするならば、E&Yが懸念する「hype」と「FOMO」が今回の調達率に大いに貢献している可能性が高いと思われます。また少しアングルを変えて考えてみると、あまりの資金調達率の低さからあたかもICOが成功しているというパフォーマンスで桁外れな調達額とペトロ・ゴールド導入を発表したという可能性もあります。結論ベネズエラ政府は独裁政権なので、今回の報道には信憑性が欠けるということになります。

ICOは資金調達をしてからプロダクトの実装まで1年〜2年かかるというデータがあり、もしペトロの資金調達が目標達成したとしても公約通りの実装になるかには疑問が残ります。

 

まとめ

今回の「仮想通貨と社会」のポイントとしては、まずベネズエラが世界で初めてとなる国主導のICOを開始した事と、それにと同時にICOが大々的に政治利用されるという暗号通貨本来の存在意義が脅かされたという点になります。

またICOを含めた仮想通貨市場のトレンドとして、理性とは逆に過剰な期待感やスペキュレーションが投資家の行動を左右している可能性が高いのではないかということになります。

参考:

The New York Times
BitcoinExchangeGuide
RIPPLE NEWS
E&Y

 

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